10章 Gisell III

ERには、ひっきりなしに救急車がやって来ていた。

「エドに……、電話して来る。こんな事になって、あいつに黙っておくわけにもいかないだろう」

「……そうね」

壁にかかった時計は、午前1時半を指している ...

10章 Gisell III

タクシーを拾い、行き先を告げると、パトリックは再びレイの携帯に電話をした。が、一向に彼女が出る気配はない。レイのアパートまでの十数分が、2人には恐ろしいくらい長く感じられた。

ようやく部屋の前に到着したパトリックが、居ても ...

10章 Gisell III

ジョージ・スター・バレエ団のパーティーが終ったのは、午後10時を過ぎた頃だった。パトリックは、タクシーでレイをアパートの前まで送った。

「パトリック、ありがとう」

そう言ってレイはタクシーから降りた。

9章 Gisell II

翌日の夕方、エドはパトリックから呼び出され、エンパイア・ステートビルのビアホールにいた。

「すまないね、こんなところに呼び出して」
「いや、構わないよ」

パトリックは半分飲みかけのビールをグイと飲み干す ...

9章 Gisell II

殆どの客が客席を立ったころ、ようやくエドも席を立った。

そして、ロビーに出て携帯電話の電源を入れると、それを見計らったように呼び出し音がなった。パトリックだった。

「やあ、どうだった?舞台は。」
「…… ...

9章 Gisell II

エドは席に着くと、プログラムを開いた。

ローラ・バークレー、間違いなくその写真はレイだ。まだ少し信じられない気分だったが、ずっと探し続けた彼女がこれからこの舞台で踊るのだと、そう思うと彼の胸は高鳴った。

開演の ...

9章 Gisell II

エドは、いつもより早めに仕事を終えてオフィスを出ると、花屋に立ち寄り、頼んでおいた花束を受け取ってから劇場へ向かった。ベージュがかった優しい色のバラはレイの好きだった花だ。

劇場へ到着し、花束を受付に言付けると、エドは開演 ...

8章 Patlic

パトリックがホテルの部屋に戻ると、アンがシャワーを浴びて出てきたところだった。パトリックは、はぁ~ とため息をつきながら、ソファにドサリと座り込んだ。

「どうしたの?大きなため息なんかついて。例のダンサーには会えたの?」

8章 Patlic

2人はスタジオを出て少し歩くと、こぢんまりとしたバーへ入った。パトリックはビールを2つオーダーし、奥のテーブル席につくと、エドを冷ややかに一瞥した。

「エド、どういうつもりだ?ローラはお前に婚約者がいると言っていたが」

8章 Patlic

着替えを済ませ、スタジオに入ると十数名のダンサーが思い思いにウォーミングアップをしていた。

(……知った顔は、いないな)

パトリックはスタジオの中をぐるりと見回すと、床に座って身体をほぐし始めた。しばらくすると ...