8章 Patlic -ふたりの男-
2人はスタジオを出て少し歩くと、こぢんまりとしたバーへ入った。パトリックはビールを2つオーダーし、奥のテーブル席につくと、エドを冷ややかに一瞥した。
「エド、どういうつもりだ?ローラはお前に婚約者がいると言っていたが」
8章 Patlic -再会-
着替えを済ませ、スタジオに入ると十数名のダンサーが思い思いにウォーミングアップをしていた。
(……知った顔は、いないな)
パトリックはスタジオの中をぐるりと見回すと、床に座って身体をほぐし始めた。しばらくすると ...
8章 Patlic -はじまり-
ニューヨーク公演3日目の夕方、パトリックは仲間のダンサー3人とラナのテラス席にいた。今日は出番もなく代役として控える必要も無い、オフのダンサーたちだ。
「昨日の舞台は大成功だったな」
「ああ、本当に。お前が彼女 ...
7章 Traces -ジゼル-
11月になって間もなくのことだった。その日、夜10時近くまで仕事をしていたエドがオフィスを出ると、携帯がコールした。ケニーだ。
「おい、今どこだ?」
「オフィスを出たところだよ」
「そうか。疲れてる ...
7章 Traces -希望-
2人は、その足で数ブロック離れたBDSのスタジオへ向かった。バタバタと2人が入って来ると、受付のアビーが
「あら、お二人さん、忘れ物?」と、明るく声をかけた。
「いや違うよ。ちょっと聞きたい事があって……」
7章 Traces -ローラ・バークレー-
土曜の昼下がり、BDSのクラスを終えたエドとケニーは、いつものようにラナに入った。
「この間の夜、タイムズスクエアの近くで、彼女を見かけた」
エドがバッグを床に置きながら言った。
「えっ、見かけたっ ...
6章 Wish I could -ネオンの向こう-
きらびやかなネオンに照らし出された通りを駅へ向かいながら、サラがぽつりと言った。
「きっと、彼女にとってあなたは永遠の存在だわ」
その言葉にエドは、不思議そうな顔をした。
サラはクスリと笑うと
6章 Wish I could -迷える心-
「エド……?私の顔に、何か……?」
サラは、エドの視線に戸惑いながら(なんとなく、マズイ展開だわね)と思った。
「サラ、僕は君を……」
エドが迷いながらそう言いかけると、サラは、彼が何を言おうとしているのか ...
6章 Wish I could -Sara-
木曜の夜、エドはSTEP IN のクラスを終えてスタジオを出ると、地下鉄の駅へ向かった。
レイの手がかりをつかもうとして通い始めたクラスだったが、もう習慣のようになっていた。最初のうちは、クラシックのクラスに入るだけで彼女 ...
6章 Wish I could -甘い痛み-
何の消息も掴めないまま、季節は秋になろうとしていた。
エドは客先からオフィスに戻ると、パソコンの電源を入れ、カバンの中の資料をデスクの上にどさりと置いた。数件のメールを確認して、返信を送ると、エドは視線をディスプレイから窓 ...