11章 ノエル 2 -アドベント-

3時を少し過ぎた頃、千夏が息を切らせながらカフェに入ってきた。
「ゴメン、ゴメン。ちょっと出遅れちゃって」
そう言って席に座ると、やって来たウェイターにカプチーノを注文した。
「で、何なのよジェイ。外のカフェに呼び出して」
千夏がそう言うと、レイがクスリと笑った。
「……ったく、あんたたちは、どうして同じ事を聞くのよ。いいじゃない、たまには洒落たカフェで話すのも」
ジェイはふて腐れた表情で言った。
「それはそうと、今年のクリスマスパーティーはどうするの?」
千夏が聞いた。
「そう、その相談をしようと思って。今年はブラック・タイでゴージャスにいこうかと思うんだけど、どうかしら?」ジェイが目を輝かせながらそう言うと
「ブラック・タイ?!」
レイと千夏がほぼ同時に言った。
「そ。去年までちょっとふざけすぎたでしょ?だから」
少しの間をおいて、レイが呆れ顔で
「……十分ふざけてるわよ。ブラック・タイなんて」と言うと、
千夏も「あのメンバーでブラック・タイ、ねぇ」と続けた。
「いいじゃない、別に。クリスマスパーティーなんだから。それに、日本じゃなかなかブラック・タイのパーティーに行く機会なんてないでしょ?」
ジェイが同意を求めるように言った。
「まあ、一種の仮装パーティーと思えばね、いいんじゃない?去年と違って誰かの判別もできるし」
千夏がニヤリと笑いながらそう言うと、ジェイは少しむきになりながら
「ちょっと、仮装パーティーなんて言わせないわよ、今年は」と、言い返した。
「……でも、私たちブラック・タイで着るようなドレス持ってないわよ」
レイが心配そうな顔をした。
「あら、そんなこと。いくらでも手配できるから安心して」と言った。
「あー、楽しみだわ。これから急いで色々準備しなくちゃね!これぞアドベントだわ」
ワクワクしながら言うジェイに、2人は『やれやれ』という表情で顔を見合わせて笑った。