11章 So far so close

パトリックは椅子をレイの前に置くとそこに腰掛けた。「ローラ、彼は……、エドは今、ニューヨークにいるんだよ」と話を切り出した。

その言葉に、レイの心臓がどきりと音を立てた。そして、ゆっくりと顔を上げると、強ばった表情でパトリ ...

11章 So far so close

翌日の午後、再びパトリックが病院を訪ねると、担当医が慌てた様子でパトリックを呼び止めた。

「バークレーさんを見ていませんか?」

顔色を変えて聞く彼に、パトリックは不安な表情をしながら

「いや……、今 ...

11章 So far so close

パトリックが病院を尋ねると、レイの担当医が彼を呼び止めた。

「実は昨日の夕方、意識が一旦戻ったんですが……」

その言葉にパトリックは安堵の表情を浮かべて

「目を覚ましたんですか?」と聞くと、彼は言い ...

11章 So far so close

レイは深い眠りの中で、ひとり彷徨っていた。まわりは深い霧に包まれ、空気はひんやりと冷たい。

(ここは、どこなの?)

何も見えない霧の中を、何かを探すようにしてレイは歩き続けた。やがて微かな光が見えたと思うと、次 ...

10章 Gisell III

ERには、ひっきりなしに救急車がやって来ていた。

「エドに……、電話して来る。こんな事になって、あいつに黙っておくわけにもいかないだろう」

「……そうね」

壁にかかった時計は、午前1時半を指している ...

10章 Gisell III

タクシーを拾い、行き先を告げると、パトリックは再びレイの携帯に電話をした。が、一向に彼女が出る気配はない。レイのアパートまでの十数分が、2人には恐ろしいくらい長く感じられた。

ようやく部屋の前に到着したパトリックが、居ても ...

10章 Gisell III

ジョージ・スター・バレエ団のパーティーが終ったのは、午後10時を過ぎた頃だった。パトリックは、タクシーでレイをアパートの前まで送った。

「パトリック、ありがとう」

そう言ってレイはタクシーから降りた。

9章 Gisell II

翌日の夕方、エドはパトリックから呼び出され、エンパイア・ステートビルのビアホールにいた。

「すまないね、こんなところに呼び出して」
「いや、構わないよ」

パトリックは半分飲みかけのビールをグイと飲み干す ...

9章 Gisell II

殆どの客が客席を立ったころ、ようやくエドも席を立った。

そして、ロビーに出て携帯電話の電源を入れると、それを見計らったように呼び出し音がなった。パトリックだった。

「やあ、どうだった?舞台は。」
「…… ...

9章 Gisell II

エドは席に着くと、プログラムを開いた。

ローラ・バークレー、間違いなくその写真はレイだ。まだ少し信じられない気分だったが、ずっと探し続けた彼女がこれからこの舞台で踊るのだと、そう思うと彼の胸は高鳴った。

開演の ...