8章 夏の終わり1 -もどかしさ-

8章 夏の終わり

「本当に、どうしたものかしらねぇ」
ため息をつきながらジェイがいった。

「何を?」
撮影した写真のデータをパソコンで処理しながらアーロンが聞いた。

「エドとレイ」

「ああ……、あの2人ね……」
「2人とも消極的だから、どうにもならないのよね。本当にじれったいったら」
「結局のところ、2人ともお互い好きなんだよね?」
「そう。でもお互いその事が分かってないわけよ。エドがねぇ、もうちょっと積極的なタイプだったら上手く行くんだろうけど……」
「エドも本気だから、余計に色々考えて何も出来ないとか?」
「そうかもしれないけど……。本気ならなおさらよ。もうちょっとねぇ。自分の気持ちを分かりやすく表現するとか。レイもレイだわよ。どうでもいい事ばっかり気にして。もっと積極的にならないと……。あーっ、まったくもう!」

ジェイが苛立たしげに叫ぶとアーロンがクスリと笑った。

「何がおかしいのよ」
「いや、あの2人よりジェイが一番焦ってるなって」
「アーロン、あなたは何も思わないの?あの2人を見てて」
「だって、なるようにしかならないよ。あの2人は時間をかければ、そのうち上手く行くんじゃないかって思うけど」
アーロンがのんびりとした口調で言った。
「ちょっと、本当にそう思ってるの?ヒツジちゃんのレイと超奥手のエドよ?!どうして2人とも、ああも鈍感なのかしらねぇ」
こめかみの辺りを押さえながらジェイが言う。
「それなら、いっそエドに言っちゃえば?レイのこと。そしたら彼だってもうちょっと強く出られるんじゃない?」
「そりゃそうだけど……。そういうのは他人の口から聞くものじゃないでしょ?」
「でも、彼の背中を押すにはいいんじゃないかな。何とかしたいんでしょ?あの2人を」

「……」

ジェイは腕組みをして少し考えたあと
「そうだわね。もう、それしかないかもね」と言った。

アーロンはデータを焼き込んだディスクを取り出すと
「上手くいくよ、きっと」と言った。

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