16章 夢のあと5 -冷たい雨-
雨が強くなってきたのか、雨水がぽたぽたと流れる音と、時折通る車が雨水を跳ね上げる音が、静かな店内に聞こえてくる。彼女を初めて抱きしめたのも、こんな雨の夜だった、とエドは思った。
しばらくすると、ジェイが新しく入れたコーヒー ...
16章 夢のあと4 -悔恨-
店内には、壁の時計が時間を刻むかすかな音と、時折コーヒーメーカーが発する蒸気の音がするだけだった。エドは長い間、息も出来ず呆然としていたが、やがて両手で顔を覆うと
「幸せになんて……、彼女なしで幸せになど……」と絶望的な声で呟 ...
16章 夢のあと3 -悲嘆-
アトリエの駐車場に到着すると、ジェイはエドの肩を軽く揺らせた。
「エド、起きて」
「ああ……、すまない。眠ってしまって……」
「いいのよ。それより、あなたに話しておきたいことがあるから、ちょっといい?」
16章 夢のあと2 -ジェイ-
レイがニューヨークへ発った翌日、ジェイは再び空港へ向かった。エドが日本へ戻る日だった。
午後5時を過ぎた頃、到着ロビーにエドの姿を見つけると、ジェイは小さく手を振った。それに気付いたエドは、少し疲れた顔でにこりと笑うと手を ...
16章 夢のあと1 -浅い春-
4月の終わりの空は、柔らかな光りに輝き、春とは思えないほど澄んでいた。レイは部屋のカーテンを閉めると、スーツケースを玄関の外に出し、部屋の中へ向き直った。
ゆっくりと部屋を見渡し、目を閉じると、瞼の中をエドと過ごした日々が ...