10章 安紗美

エドは、マンションのエントランスまで来ると、鍵を使わずに部屋の番号を押した。
「レイ、戻ったよ」
『お帰りなさい。今、開けるわ』インターホン越しにレイの声が答えた。
間もなく、入り口の自動ドアが、静かに開いた。 ...

10章 安紗美

あの日以来、レイは度々安紗美の視線を感じる事になった。金曜の夜、レッスンを終えたレイが帰り支度をしながら
「もう、困るのよね、本当に」とため息まじりに言った。
「立川のこと?」
「そう」
「何かあったの ...

10章 安紗美

翌日、近くのカフェで昼食を終えたレイと千夏が会社に戻ると、エントランスに安紗美の姿があった。

安紗美はレイに近づくと、いきなり
「嶋田さんと付き合ってるって、本当なんですか?」と聞いた。

レイが突然の事 ...

10章 安紗美

開発部オフィスの3階は、半分が社員達のためのリラックスコーナーになっていた。ウォーターサーバーやコーヒーなどが常備されたそこは、窓際がカウンターになっており、フロアにはいくつかのテーブルが設置されていた。

総務部の2人は、 ...