15章 微熱

「……今、何て言ったの?」

レイは、ジェイを見据えると、ゆっくりと静かに
「もう、彼とは会わない、って言ったの」と答えた。

ジェイは、レイの言葉を疑うように

「どういう、こと?」と言うと、眉 ...

15章 微熱

1日をぼんやりと過ごしたレイは、午後7時を過ぎた頃、部屋を出た。4月とは名ばかりで、まだ外の空気は冷たく、レイは小さく身体を震わせると、ニットの帽子を耳のところまでぐっと下げた。

「どうしたのよレイ、急に」

突 ...

コラム

バレエを習うからには、きれいな衣装を着て発表会に出たい!と思う人も多くいるのではないでしょうか?発表会という目標があると、レッスンを続けるモチベーションにもなります。

私が初めて発表会に出たのは、大人だけのバレエスタジオに ...

15章 微熱

次の週末、エドはアメリカに発つことになっていた。レイもそれまで取っていなかった休暇をとり、彼より1週間遅れてアメリカへ行くことを決めていた。

クリスティからの電話は、ここ数週間ぴたりと止まったままで、気がかりな事と言えば、 ...

15章 微熱

その日の夜、部屋に戻ったレイは、まだ体にだるさが残っているような気がして、ソファで横になっていた。リビングボードに置かれた時計は、午後8時ちょうどを指している。

エドが戻るのは、おそらく11時近くだろう。食欲はないが、なに ...

15章 微熱

夕方のクラスを終えたレイが、少し疲れた表情でオフィスに戻って来た。

「レイ、大丈夫?なんだか疲れた顔をしているわよ」
心配そうに千夏が聞いた。
「ええ、大丈夫。ちょっと風邪気味なのよ。今年の風邪はしつこいわ ...

14章 冬空

ジェイは、やれやれと一息つくと

「あなたがクリスティを傷つけまいとすればする程、レイが傷つくって言うのは間違っていないわ。ねえ、エド、あなたにとって一番大切なのは何か、よく考えて。クリスティを傷つけないことなの?それともレ ...

14章 冬空

「やあ、ジェイ。しばらく」
エドは上着を脱ぐと、ジェイのすぐ前、千夏とひとつ間を空けたスツールに腰掛けた。

「……随分、お疲れみたいね」
ジェイがそう言いながら、彼の前にグラスを置いた。
「色々とね ...

14章 冬空

「また、レイがスタジオに篭っているのよね」
千夏が心配そうにため息をついて言った。
「……エドと何かあったの?」
「彼と喧嘩したくらいなら、スタジオに篭ったりしないわよ。話はもっとややこしいの。ジェイ、何も聞い ...

14章 冬空

年も明けた早々、レイの担当するクラスに初めて見かける外国人女性が混じっていた。外国人がクラスにいることは珍しいことではなかったが、中級レベルのクラスを受けるには、まだ訓練が足りない様子だった。それでも彼女は堂々としていて自分に自信を持 ...