15章 微熱 6 -去りゆくもの-
病院の待合室で、レイの処置が終わるのを待ちながらアーロンが不安げに聞いた。
「ジェイ、レイは……」
「……あの子、お腹に子供がいたんだわ」
まるで独り言のようにジェイが言った。
「えっ?」 ...
15章 微熱 5 -悲しみ-
「……今、何て言ったの?」
レイは、ジェイを見据えると、ゆっくりと静かに
「もう、彼とは会わない、って言ったの」と答えた。
ジェイは、レイの言葉を疑うように
「どういう、こと?」と言うと、眉 ...
15章 微熱 4 -決意-
1日をぼんやりと過ごしたレイは、午後7時を過ぎた頃、部屋を出た。4月とは名ばかりで、まだ外の空気は冷たく、レイは小さく身体を震わせると、ニットの帽子を耳のところまでぐっと下げた。
「どうしたのよレイ、急に」
突 ...
15章 微熱 3 -クリスティ-
次の週末、エドはアメリカに発つことになっていた。レイもそれまで取っていなかった休暇をとり、彼より1週間遅れてアメリカへ行くことを決めていた。
クリスティからの電話は、ここ数週間ぴたりと止まったままで、気がかりな事と言えば、 ...
15章 微熱 2 -秘密-
その日の夜、部屋に戻ったレイは、まだ体にだるさが残っているような気がして、ソファで横になっていた。リビングボードに置かれた時計は、午後8時ちょうどを指している。
エドが戻るのは、おそらく11時近くだろう。食欲はないが、なに ...
15章 微熱 1 -心の影-
夕方のクラスを終えたレイが、少し疲れた表情でオフィスに戻って来た。
「レイ、大丈夫?なんだか疲れた顔をしているわよ」
心配そうに千夏が聞いた。
「ええ、大丈夫。ちょっと風邪気味なのよ。今年の風邪はしつこいわ ...