16章 夢のあと2 -ジェイ-

16章 夢のあと

chapter16

レイがニューヨークへ発った翌日、ジェイは再び空港へ向かった。エドが日本へ戻る日だった。

午後5時を過ぎた頃、到着ロビーにエドの姿を見つけると、ジェイは小さく手を振った。それに気付いたエドは、少し疲れた顔でにこりと笑うと手を振り返した。

「おかえりなさい、疲れたでしょう?」
「レイは?」
即座にそう聞かれて、ジェイは一瞬口ごもったが
「……レイは、来られないわ」と答えた。
「まだ体調が?」
心配そうにエドが聞いた。
「いいえ、違うわ」
「そう、それならいいんだけど。……ずいぶん心配したよ、君からレイが悪い風邪を拾って熱を出したからボストンには来られないと聞いたときは……」
「風邪はもう大丈夫よ」
「そう、よかった。電話してもずっと繋がらなかったから……、心配だったんだよ」
ジェイはエドの話を遮るようにして
「車で来たから、家まで送るわ」と言った。

スーツケースをトランクに入れ、シートに身を沈めると、エドは疲れたように息を吐き、ネクタイを少し緩めた。

「長時間のフライトで疲れてるでしょ?眠っていてもいいわよ。着いたら起こすから」
そう言ってジェイはエンジンをかけた。
「ありがとう」
よほど疲れているのか、エドはすぐに隣のシートで軽い寝息を立てはじめた。眠っていてくれた方がいい、とジェイは思った。レイが去ったことを話すのは1秒でも後にしたかった。

彼が部屋に戻れば、レイがいなくなったことにすぐに気付くだろう。レイは、何も言わないで欲しいと言ったが、エドには事実をきちんと伝えておくべきだとジェイは思っていた。 日の暮れはじめた高速道路を走りながら、チラリと隣のシートで眠るエドを見ると、ジェイはやりきれない表情でため息をついた。

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