7章 Patlic 4 -ロミオとジュリエット-

7章 Patlic

chapter7

パトリックとはパートナーとして踊った事は殆どなかったはずなのに、息もぴったりと合い、とても踊りやすかった。

「ローラ、君の踊りは相変わらず優雅で美しい」

パトリックは息を切らしながらそう言うと、レイの手を取ってひざまずき、王子様よろしく少しおどけながら手の甲にキスをした。レイはそんな彼を見て、思わず笑った。

パトリックは、レイに少しのアドバイスをすると

「あー、本番も君と踊りたいよ。こんなに息が合うとは思わなかった。いっそシカゴにこないか?」と冗談まじりに言った。
「まさか!おだてたってダメよ。でも嬉しいわ。こんな風に踊るの、久しぶりだもの」
「よし。じゃあ、あと5分休憩したら、もう一度通すか」

エドは、ミーティングを終えてエントランスに出ると、微かに聞こえる音楽に立ち止まった。その音はエントランスに隣接した小スタジオから聞こえており、いつもは閉じてられたままのブラインドが開いている。

「これは、ロミオとジュリエット……?」

音の聞こえてくる方へ近づくと、窓越しに、先程見かけた背の高いブロンドの男性とレイが踊っているのが見えた。

まるで羽のように軽やかにリフトされ、美しく優雅に踊るレイに目を奪われながらも、彼女と踊っているパートナーの男が何者なのかがとても気になった。

愛し合う2人を演じ、踊る姿が目に映る。

エドは胸にズキリとした痛みを覚えると、足早にエントランスを出た。

時間を忘れて踊っていると、千夏がスタジオの扉をコンコンとノックした。
「そろそろ時間よ。そんなに続けて踊ってよく疲れないわね、あなたたち」と半ば呆れながら言った。
「えっ?もうそんな時間?」
レイがスタジオの壁にかかった時計を見ると、もう6時をまわっていた。7時から始まるクラスの準備を、そろそろ始めなければいけない時間だった。

「この後のクラス、見学していいか?」
パトリックがタオルで汗を拭いながら聞いた。
「ええ。でも、大人の初級クラスよ」
「君が教えるの?」
「いいえ、教えるのはアルノー。私は通訳」
レイはスタジオのブラインドを閉めながら言った。
「アルノー?パリのバレエ団にいた?」
「そう。そろそろ来る頃だから紹介するわ」
「……って事はなんだ?アルノーはフランス語だろ?その通訳って、ローラ、フランス語も出来たのか?!」
パトリックは目を丸くして言った。
「そんなに驚かなくても……。バレエ用語自体フランス語だし、バレエ学校で少し習ったレベルよ」

苦笑いしながらレイは空調を切ると、明かりを消しスタジオのドアを閉めた。

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7章 Patlic

Posted by Marisa