15章 微熱

次の週末、エドはアメリカに発つことになっていた。レイもそれまで取っていなかった休暇をとり、彼より1週間遅れてアメリカへ行くことを決めていた。

クリスティからの電話は、ここ数週間ぴたりと止まったままで、気がかりな事と言えば、 ...

15章 微熱

その日の夜、部屋に戻ったレイは、まだ体にだるさが残っているような気がして、ソファで横になっていた。リビングボードに置かれた時計は、午後8時ちょうどを指している。

エドが戻るのは、おそらく11時近くだろう。食欲はないが、なに ...

15章 微熱

夕方のクラスを終えたレイが、少し疲れた表情でオフィスに戻って来た。

「レイ、大丈夫?なんだか疲れた顔をしているわよ」
心配そうに千夏が聞いた。
「ええ、大丈夫。ちょっと風邪気味なのよ。今年の風邪はしつこいわ ...

14章 冬空

ジェイは、やれやれと一息つくと

「あなたがクリスティを傷つけまいとすればする程、レイが傷つくって言うのは間違っていないわ。ねえ、エド、あなたにとって一番大切なのは何か、よく考えて。クリスティを傷つけないことなの?それともレ ...

14章 冬空

「やあ、ジェイ。しばらく」
エドは上着を脱ぐと、ジェイのすぐ前、千夏とひとつ間を空けたスツールに腰掛けた。

「……随分、お疲れみたいね」
ジェイがそう言いながら、彼の前にグラスを置いた。
「色々とね ...

14章 冬空

「また、レイがスタジオに篭っているのよね」
千夏が心配そうにため息をついて言った。
「……エドと何かあったの?」
「彼と喧嘩したくらいなら、スタジオに篭ったりしないわよ。話はもっとややこしいの。ジェイ、何も聞い ...

14章 冬空

年も明けた早々、レイの担当するクラスに初めて見かける外国人女性が混じっていた。外国人がクラスにいることは珍しいことではなかったが、中級レベルのクラスを受けるには、まだ訓練が足りない様子だった。それでも彼女は堂々としていて自分に自信を持 ...

13章 Christiy

エドが部屋に戻ると、玄関にレイの靴がきちんと揃えて置かれていた。

「レイ、来ているのか?」

エドが部屋の奥に呼びかけると、レイがリビングの扉を開けて顔を出した。

「おかえりなさい。……ごめんなさい、 ...

13章 Christiy

「レイ、あなたによ」

千夏が、電話を保留にしながら言った。
「私に?誰から?」不思議そうにレイが聞いた。

外線でレイ宛に電話が掛かって来るなど、殆どないからだ。

「名前を聞いたんだけど、とに ...

13章 Christiy

午後6時半を少し過ぎた頃、KINGSの扉が開いた。
「あらエド、珍しいわね。こんな早い時間に来るなんて」
ジェイが、氷を削る手を止めて言った。
「出張明けくらいはね」
エドは、上着を脱いで入り口近くのク ...